保育士の退職金はいくら?|勤続年数別シミュレーションと公立・私立の差

2026年6月 ・ 読了5分

先日、同期の先生とひさしぶりに会う機会がありました。

7年勤めた認可保育園を辞めて、別の業界に転職した子です。会話の途中で、その子がぽつりと言いました。

「退職金、もっとあると思ってたんだ。3年ちょっとしか入ってなかったから、ほとんどゼロに近かったんだ」

私は驚きました。その子が働いていたのは、都内のそこそこ大きな社会福祉法人の園。なのに、退職金はほぼゼロに近かった——。

話を聞いていくと、原因はいくつか見えてきました。退職共済に加入していたのが途中から、勤続年数が短い、そして何より「退職金の仕組みを一度も調べないまま辞めてしまった」こと。

私はその時、心の中で思いました。「これ、ちゃんと記事にしなきゃ」と。

保育士の退職金は、勤務先がどこかによってびっくりするほど差が出ます。公立か私立か、社会福祉法人か株式会社か、退職共済に入っているか、勤続何年か——。この記事では、そのリアルな実額と仕組みを、できる限り正直に書いていきます。


退職金の3つの仕組み——勤務先で決まるもの

保育士の退職金は、ざっくり分けると3種類あります。

👩‍🏫
ベテラン先生
「勉強しましょう。保育士の退職金は、ほぼこの3パターンのどれかに収まるんです」

1. 公立保育園(地方公務員退職手当)

公立保育園で働く保育士は、その自治体の地方公務員という扱いです。辞めるときは「地方公務員退職手当」という制度で退職金が支払われます。

原資は自治体の一般財源、計算は国家公務員退職手当法に準じた条例ベース。全国どこの自治体でもおおむね共通の計算式で、勤続年数が長くなるほど支給率が大きく上がります。公立保育士の退職金がしばしば「破格」と言われるのはこの仕組みのおかげです。

2. 私立保育園(社会福祉法人)の退職共済

私立の保育園でも、社会福祉法人が運営しているケースの多くは「退職共済」に加入しています。代表的なのが、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の社会福祉施設職員等退職手当共済 と、都道府県ごとの社会福祉協議会(都道府県社協)の退職共済 の2本立て。

たとえば東京都の場合、東京都社会福祉協議会が運営する「東京都民間社会福祉事業職員共済会」があり、加入している園の職員は、そこから退職金が支払われます。

掛金は園側が負担し、職員は毎月支払わなくてOK。辞めるときに勤続年数と号俸に応じて支給される、というのが基本の形です。

3. 私立保育園(株式会社系など)の独自制度

株式会社や一部のNPO、医療法人が運営する保育園の場合、退職共済に加入していない園も珍しくありません。その場合は、園独自の退職金規程があるか、まったくないかのどちらか。

「退職金あり」と求人票に書いてあっても、中身はピンキリです。中小企業退職金共済(中退共)に加入している園もあれば、社内積立型のこともあれば、「就業規則には書いてあるけど金額がほぼ象徴的」というパターンまで。

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保育士Cさん
「えっ、同じ私立でもそんなに違うんですか……知らずに入ったら怖いですね」
👩‍🏫
ベテラン先生
「だから求人票を見るときに『退職金あり』の一言で安心したらだめなんです。どの仕組みに加入しているかまで見るクセをつけましょう」

勤続年数別シミュレーション——ざっくり実額

ここからは、2026年時点の一般的な水準をもとにしたシミュレーションです。園や自治体、号俸によって前後するので、あくまで「ざっくりの目安」として読んでください。

勤続3年で辞めた場合

勤務先 退職金の目安
公立保育園(地方公務員) 約30〜50万円
私立・退職共済加入園 約10〜20万円
私立・独自制度/中退共 0〜15万円
認可外・企業主導型(なしの園も多い) 0〜数万円

私の同期が「ほぼゼロに近かった」と言っていたのは、ちょうどこのゾーン。3年未満で辞めると、共済によっては「支給なし」のラインに引っかかることもあります。

勤続5年で辞めた場合

勤務先 退職金の目安
公立保育園 約70〜100万円
私立・退職共済加入園 約30〜50万円
私立・独自制度/中退共 10〜40万円
認可外・企業主導型 0〜20万円

保育士の平均勤続年数は全国平均で7〜8年と言われていますが、5年で辞める人は実際かなり多いです。この金額を見て「思ったより少ない」と感じるか「こんなにもらえるんだ」と思うかは人それぞれ。

勤続10年で辞めた場合

勤務先 退職金の目安
公立保育園 約250〜400万円
私立・退職共済加入園 約100〜180万円
私立・独自制度/中退共 50〜120万円
認可外・企業主導型 0〜50万円

ここで公立と私立の差がぐっと広がり始めます。公立は支給率の伸びが大きく、10年を超えたあたりから金額の上昇角度が変わるんです。

勤続20年で辞めた場合

勤務先 退職金の目安
公立保育園 約700〜1,000万円
私立・退職共済加入園 約300〜500万円
私立・独自制度 100〜300万円
認可外・企業主導型 ほぼなし〜100万円

20年勤続の公立は、住宅ローンの頭金や老後資金の一部になるレベル。一方で、退職共済に入っていない私立に20年勤めて退職金が100万円台、というケースも現実には存在します。

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保育士Bさん
「僕、前の園を4年で辞めたとき、社会福祉法人だったので退職共済に入っていたんだ。振り込まれた金額は手取りで25万円くらい。『え、これだけ?』って正直思ったけど、あとで調べたら相場通りだった」
👩
保育士Cさん
「私、借り上げ社宅で救われて地方から出てきた組なんですけど、『退職金なんて辞めるとき気にすればいい』って思ってました……。今聞いて、急に不安になってきました」
👩‍🏫
ベテラン先生
「大丈夫。気づいた時点で情報は取れますから。今日話すポイントを押さえていきましょう」

私立保育園は「退職共済に加入しているか」が最大のポイント

私立の保育園で働く場合、退職金の有無と金額を決める最大の要素は「退職共済に加入しているかどうか」です。

加入しているか確認する方法

  1. 求人票の「退職金」欄を見る ——「退職金制度あり(◯年以上)」と具体的に書かれている園は加入している可能性が高いです。
  2. 就業規則を開示してもらう ——入職時に必ず渡される(渡されるべき)書類。「退職金」「退職手当」「退職共済」の項目をチェック。
  3. 面接で直接聞く ——「退職共済に加入されていますか?」と聞いて、園長先生や事務の方が即答できない園は、正直あまりよくないサインです。

勤続年数が短いとほぼ出ない共済もある

退職共済には、基本的に「最低加入年数」が設定されていることが多いです。多くは1年以上で支給対象になりますが、共済の種類や加入タイミングによっては、3年未満だとほぼ支給ゼロというケースもあります。

「園が加入してるから安心」ではなく、「自分がいつ加入扱いになったか」まで確認することをおすすめします。


認可外・企業主導型は「退職金なし」の園も普通にある

ここは誤解している方が多いので、はっきり書きます。

認可外保育施設や企業主導型保育事業の園には、退職金制度がない園も普通にあります。

もちろん、しっかり整備されているところもあります。ただ全体としては、認可園に比べて退職金制度が整っていない割合が高い、というのが2026年時点の現実。

私自身、過去に認可外で働く後輩から「就業規則見たら退職金の項目自体がなかった」という相談を受けたことがあります。その園は決してブラックではなく、むしろ人間関係は良好。ただ、制度として退職金がない、それだけのことでした。

👩
保育士Cさん
「退職金がないって、違法じゃないんですか?」
👩‍🏫
ベテラン先生
「違法ではないんです。退職金は法律で義務化されているわけじゃないですから。あくまで園ごとの制度なんですよ」

「退職金前払い制度」という選択肢——ただし注意点あり

最近ちらほら見かけるのが「退職金前払い制度」。これは退職金として積み立てる分を、毎月の給与に上乗せして払う仕組みです。

一見すると「毎月の手取りが増える」のでお得に見えます。ただし注意点が2つ。

  1. 所得税と社会保険料がかかる ——退職金は「退職所得」で税金が軽くなる優遇がありますが、給与に上乗せされると普通の給与として課税されます。手取りベースで見ると、実はそんなに増えない場合も。
  2. 長く勤めた時の「まとまった金額」がなくなる ——20年後、30年後に家の頭金や子どもの学費に充てられるはずのお金が、毎月の生活費に溶けてしまうリスクがあります。

前払いを選ぶかどうかは、本人のライフプラン次第。「目先の家計を回すために前払い」を選ぶ人もいれば、「老後を考えて従来型の退職金積立」を選ぶ人もいます。どちらが正解ということはありません。

ただ、前払い制度の園を「退職金あり」だと思って入って、辞めるときに「え、一時金としての退職金はないの?」とびっくりするパターンは避けたいところです。


転職前に、退職金は必ず確認しておこう

ここまで書いてきた通り、保育士の退職金は園ごとに本当にバラバラです。

同じ「社会福祉法人の認可園」でも、加入している共済が違えば金額は変わります。同じ「株式会社の認可園」でも、中退共に入っているかどうかで天と地の差。

だから、転職する前には必ずこの3つを確認してください。

  1. 退職金制度の有無(就業規則・求人票で確認)
  2. 退職共済の加入状況(加入している場合、どの共済か)
  3. 最低支給年数(何年勤めたら支給対象か)
🧑
保育士Bさん
「これ、面接の場で自分から聞くの、ぶっちゃけ気まずいですよね。『お金のことしか見ていない』って思われたらどうしよう、とか」
👩‍🏫
ベテラン先生
「そうなんですよね。だからエージェントに聞いてもらうのが一番ラクですよ」

エージェントに「退職金の有無」を確認してもらう

転職エージェントは、あなたの代わりに園に質問してくれます。「この園は退職共済に加入していますか?」「最低加入年数は?」「前払い制度ですか?」——こういう聞きにくい質問を、求職者に角が立たないように代わりに聞いてくれるのが本来のエージェントの仕事です。

私が普段から周りにすすめているのは レバウェル保育士

です。

レバウェル保育士は、保育業界に特化していて、求人票に書かれていない園の内部情報(人間関係、離職率、退職金制度の実態など)にも比較的詳しいのが特徴です。「求人票に退職金の記載がないんですが、本当にないんですか?」みたいな質問を、担当アドバイザー経由で園に直接投げてもらえます。

自分で園に聞いたときの気まずさと違って、エージェント経由なら「求職者側が慎重に条件を確認している」という自然な形で聞けるので、角が立ちにくい。私は転職サービスを1つに絞るタイプではないですが、「園への条件確認代行」という用途では、使って損はないサービスです。


退職金より「年収UPの総額」の方が大きいことも

最後に、少し目線を変えた話を。

「退職金が少ない園だから、辞めずに長く勤めた方がトク」と考える方もいます。気持ちは分かります。ただ、数字で見ると必ずしもそうではないケースも多いんです。

たとえば、勤続5年で退職金40万円もらえる園に、あと5年我慢して勤めるとします。5年後の退職金はだいたい90〜130万円。つまりその5年で増える退職金は「50〜90万円」ほど。

一方で、今すぐ年収が50万円上がる園に転職できたとしたら?

50万円 × 5年 = 250万円。

単純計算でも、年収UPの方が総額でだいぶ大きくなることがあります。もちろん人間関係や通勤、保育観の合う合わないといった要素もあるので「年収だけで決めよう」とは私も思いません。

でも、「今の園の退職金が惜しくて動けない」と感じているなら、一度冷静に計算してみてください。退職金で縛られて動けないでいる間に、手取り年収で差がついてしまっているケースは、現場で本当によく見ます。

👩
保育士Cさん
「退職金ばっかり気にしてたけど、年収UPの方が効くこともあるんですね」
🧑
保育士Bさん
「僕、前職から受け取った退職金は手取り25万円。転職後に年収が年40万円上がったから、半年ちょっとで取り返した計算になります」
👩‍🏫
ベテラン先生
「そうなんですよね。退職金は『守り』の話、年収は『攻め』の話。両方ちゃんと見てから判断するのが一番賢いですよ」

まとめ

保育士の退職金は、

という構造になっています。勤続3年・5年・10年・20年で金額は大きく変わり、公立と私立の差は勤続年数が長くなるほど開いていきます。

転職する前には必ず「退職金制度の有無」「退職共済の加入状況」「最低支給年数」を確認してください。自分で聞きにくい場合は、レバウェル保育士

のようなエージェントに代わりに聞いてもらうのが一番スムーズです。

そして最後にもう一度だけ。退職金の金額にとらわれて、今の職場に無理に残り続ける必要はありません。退職金は守り、年収は攻め。両方ちゃんと見てから、あなたにとってベストな選択をしてくださいね。

※本記事内のシミュレーション金額は2026年時点の一般的な水準をもとにした目安です。実際の支給額は自治体・園・共済制度・号俸・勤続年数によって変動しますので、ご自身の勤務先の就業規則・共済制度要項で必ず確認してください。

保育士の退職金についてよくある質問

保育士の退職金はいくらもらえますか?

公立10年で約200万円、私立社会福祉法人共済10年で約100万円が一つの相場です。

公立は地方公務員退職手当法ベースで支給率が高く、20年勤続で約500万円、30年で約1,000万円超が見えます。私立は社会福祉施設職員等退職手当共済が中心で、勤続年数と号俸で決まる仕組み。差は2倍以上開きます。

保育士の退職金の3つの仕組みとは?

公立の地方公務員退職手当、私立の退職共済、独自規程の3パターンに大きく分かれます。

公立は地方公務員退職手当法による支給。私立社会福祉法人は独立行政法人福祉医療機構(WAM)や都道府県社協の退職共済が代表例。株式会社運営の認可園や認可外は法人独自の退職金規程に従う形になります。

勤続3年で退職するといくらもらえますか?

公立で約30〜50万円、私立共済で約20〜30万円、独自規程は支給ゼロもあります。

勤続3年は退職金の効率が悪いラインです。退職共済は3年未満で支給ゼロになる規程もあり、勤続5年以降から金額が伸び始めます。同じ勤続年数でも私立より公立、共済加入園のほうが支給額は安定して大きくなります。

退職金は転職時に損しないコツは?

退職共済加入園を選び、5年・10年の節目を超えてから動くのが基本戦略となります。

退職共済の支給率は勤続年数とともに加速度的に上がるため、4年で辞めるより5年、9年より10年まで待つだけで数十万円の差が生まれます。転職時に「退職共済加入の有無」を必ず確認することも損を防ぐ鉄則です。

退職金には税金がかかりますか?

退職所得控除があり、勤続20年以下なら40万円×年数までが非課税扱いとなります。

勤続20年以下は40万円×年数、20年超は800万円+70万円×(年数-20)の退職所得控除があります。勤続10年で400万円までは課税ゼロ、退職金200万円なら全額非課税。長く勤めるほど税制上もお得な仕組みです。


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